ブリューエン株式会社代表取締役CEO 田中結子(たなかゆうこ)氏
■ 自己紹介
岐阜県大垣市出身。
東京外国語大学在学中に、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校およびドイツ・マールブルク大学へ長期留学。卒業後は国内製薬メーカーで営業職に従事。結婚を機に退職し、「転勤族の妻」として働ける環境を模索。派遣社員として複数の職場で経験を積んだ後、フリーランスとして翻訳・通訳の仕事を始めました。
その後、東京のIT企業にて専属通訳兼秘書として入社。役員秘書から経営企画、海外事業開発責任者を経て、同社の代表取締役CEOに就任。
2023年、ライフステージの変化を経験した自身の原体験をもとに、岐阜県大垣市で「働きたくても働けない女性たち」を支援すべく起業を決意。2024年にブリューエン株式会社を設立し、全国の企業と連携しながら、ジェンダーギャップの解消に挑戦し続けています。
Q. あなたもしくはあなたの組織で、今、大切にしていることや、活動で意識しているテーマがあれば教えてください。
私たちブリューエンが大切にしているのは、「制約の中にこそ創造性がある」という信念です。時間や場所、ライフステージなど、様々な制約の中で働くことを諦めかけていた人たちが、クリエイティビティを発揮できる場をつくる。これは私自身が育児や転勤に悩んだ経験から生まれた価値観でもあります。
今力を入れているのは「IT忍者」や「えいご屋さん」など、地元の地域社会を支えるプロジェクトです。“誰かを支えたい気持ち”や“好きなこと”を、きちんと価値として届けられる仕組みを整えながら、社会にあたたかな循環をつくることを目指しています。
日々の判断の基準になるのは、「その人の才能が咲く場所か?」「未来がワクワクするか?」という問いです。
Q. どのような支援・協力ができそうですか?
ブリューエンでは、「ライフステージの変化によってキャリアの方向性を見失ってしまった女性」に対して、業務委託という働き方を通じて、新たな一歩を踏み出すサポートを行っています。「子育てや介護を経て、もう一度社会とつながりたい」「自分のスキルを活かして、チームで働きたい」と願う方に向けて、学び直しや実践の場、そして仲間とのつながりを提供しています。
また、地域の小規模事業者の中には、「ITが苦手で、集客や運用に苦戦している」という方も多くいらっしゃいます。そうした方々に対しては、デジタル導入やSNS運用、ウェブ周りの整備などを“かゆいところに手が届く”ようにサポートする「IT忍者」事業を展開しています。
さらに、「地元の魅力を世界に届けたい」と考えている伝統工芸品や地場産業の事業者さん、あるいはインバウンド対応を強化したい飲食店・宿泊施設・観光地の皆さんに向けて、海外展開や多言語対応の支援を行うのが「えいご屋さん」です。英語が苦手でも、文化や価値をちゃんと伝えられる仕組みを一緒につくっています。
Q. 「こんな人に出会いたい/支援したい」と思っているのは、どんな方ですか?
まず出会いたいのは、「家庭や環境の変化でキャリアの自信を失ってしまったけれど、本当は誰かの役に立ちたいと思っている女性たち」です。そうした方に、ブリューエンでの実務経験や仲間との協働を通じて、自分の強みを再発見してほしいと思っています。
また、「ITが苦手すぎて、パソコンやSNSが怖い」という地域の小規模事業者さんにも出会いたいです。その人のペースに寄り添って、わかるところから一歩ずつ、一緒に取り組むパートナーでありたいと思っています。
そしてもう一つ、地元に根ざした技術や文化を海外に届けたいという想いを持つ工芸や観光関連の方々にも、とても共感しています。英語が話せるかどうかではなく、「伝えたい」という気持ちがある人と一緒に、言葉の壁を超えていくお手伝いができたらと思っています。
Q. 「共創」「場づくり」「星が丘」などのキーワードから感じることがあれば教えてください。
「共創」や「場づくり」は、ブリューエンの根っこにあるキーワードでもあります。一人ではできないことが、誰かと一緒なら叶う。しかも、関係性があたたかいほど、可能性は広がる。そんな感覚を大切にしています。
星が丘という言葉からは、ちょっと未来の「とがっていて、あたたかくて、どこか自由」な空気を感じます。そういう場所で、一緒に何かを始められるのはとても嬉しいなと思っています。
Q. クリエイティブガレージに関わる方々へのメッセージがあればぜひ。
クリエイティブガレージという場所は、何かを「始めたい」「変えたい」「形にしたい」と思っている人たちにとっての“種まきの場所”だと思っています。
すぐに芽が出るとは限らないけれど、ここには見守ってくれる人がいて、必要な光や水があり、何より土壌があたたかい。だからこそ、「いまの自分に何ができるかわからない」「少し自信がない」という人でも、安心して自分の思いやアイディアを持ち寄れる場所なのではないでしょうか。
私たちブリューエンも、制約の多い環境にいる人たちが、自分らしい働き方を見つけたり、小さな「できた」を積み重ねていく姿を、何度も見てきました。共創の場には、その人の可能性を引き出す力があると信じています。
すでに関わっている仲間たちへは、これからも“お互いの違い”を楽しみながら、柔らかく強くつながっていきましょうという気持ちを伝えたいです。そして、これから関わる方へは、「あなたの中にある種を、ここで一緒に育てていきませんか?」というお誘いの気持ちでお待ちしています。
無理に何かを“やらなきゃ”と思わなくてもいい。でも、ふと動きたくなった時に、そっと背中を押してくれる存在がここにはあります。そんな場所で、いつかお会いできることを楽しみにしています。