「一人で会社をやっているだけなのに、社会保険にまで入る必要があるの?」——法人を設立したばかりの一人社長が、必ず一度は突き当たる疑問です。結論から言うと、自分に役員報酬を支払っている一人社長は、健康保険と厚生年金への加入が原則として義務になります。従業員がいなくても、社長ひとりだけの会社でも例外ではありません。
ただし「役員報酬がゼロなら加入しない(できない)」など、実務では判断が分かれるポイントもあります。この記事では、なぜ一人でも加入義務が生じるのか、2026年度の料率でどれくらい負担が増えるのか、個人事業主のときと比べてどうなるのかを、実務目線で順番に整理します。
※本記事は一般的な制度の解説です。個別の加入可否や保険料の判断は、社会保険労務士や年金事務所にご確認ください。
結論:役員報酬があれば一人社長でも社会保険は「原則加入」
法人は、社長ひとりだけであっても「強制適用事業所」に該当します。そして代表取締役に役員報酬が支払われていれば、その社長は被保険者として健康保険・厚生年金に加入しなければなりません。これは選べる・選べないの話ではなく、法律上の義務です。加入を怠ると、後から遡って保険料を請求されることもあります。
逆に、設立直後で役員報酬をまだ設定していない、あるいは報酬をゼロにしている場合は、給与から天引きすべき対象がないため加入できません。この「報酬があるかどうか」が最初の分かれ道になります。
そもそも社会保険とは?一人社長に関係する制度を整理
ひとくちに社会保険といっても複数の制度があります。一人社長が関係するのは主に次の2つです。
ひとつが健康保険で、病気やケガの医療費を軽減し、傷病手当金なども受けられます。もうひとつが厚生年金で、国民年金に上乗せされる公的年金です。会社員時代に給与から引かれていたものと同じ仕組みで、法人化するとこの2つに加入するのが基本形になります。40歳以上になると健康保険に介護保険分が上乗せされます。労災保険・雇用保険は「労働者」向けの制度なので、原則として社長ひとりの会社では対象外です。
なぜ法人だと一人でも加入義務が生じるのか
個人事業主のときは、従業員が常時5人未満なら社会保険は任意でした。ところが法人になると、業種や人数に関係なく強制適用事業所となり、報酬を受け取る役員は加入対象になります。「会社」という法人格ができた瞬間に、社長自身も「その会社に雇われている人」と同じ扱いになる、とイメージすると分かりやすいでしょう。
この違いを知らずに法人化し、あとから加入手続きと保険料負担に驚くケースは少なくありません。設立と同時に発生するコストとして、あらかじめ見込んでおくことが大切です。
2026年度の保険料率で負担を試算する
2026年度の主な料率は次のとおりです。厚生年金は全国一律ですが、健康保険(協会けんぽ)は都道府県ごとに異なります。
| 制度 | 2026年度の料率(目安) | 負担の考え方 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 18.3%(全国一律) | 本来は労使折半だが、一人社長は会社・個人の両方を実質負担 |
| 健康保険(協会けんぽ) | 全国平均 約9.9%(都道府県別) | 2026年4月納付分から平均料率が引き下げ |
| 介護保険(40〜64歳) | 約1.62%を健康保険に上乗せ | 該当年齢のみ |
たとえば役員報酬を月30万円に設定した場合、厚生年金と健康保険を合わせた保険料は、会社負担・個人負担を合計すると月におおむね8〜9万円程度になります。一人社長は会社と個人の両方が自分の財布なので、実質はこの全額が自分の負担、という点が最大のポイントです。※標準報酬月額の区分により金額は変わります。正確な額は協会けんぽの保険料額表でご確認ください。
個人事業主の国保・国民年金と比べてどちらが得か
「法人化すると社会保険の負担が重い」とよく言われます。実際に個人事業主時代の国民健康保険・国民年金と比べると、次のような違いがあります。
| 比較項目 | 個人事業主(国保・国民年金) | 一人社長(協会けんぽ・厚生年金) |
|---|---|---|
| 保険料の決まり方 | 前年所得や自治体で変動 | 役員報酬(標準報酬月額)で決定 |
| 将来の年金 | 国民年金のみ | 厚生年金が上乗せされる |
| 傷病手当金・出産手当金 | 原則なし | あり |
| 負担感 | 所得が高いほど国保が重い | 報酬設定で調整余地あり |
単純な保険料の高さだけでなく、将来の年金額や保障の手厚さも含めて見ると、一概にどちらが得とは言えません。報酬設定と合わせて、トータルで判断するのが現実的です。
加入の手続きと必要書類
加入は、会社の所在地を管轄する年金事務所へ「新規適用届」「被保険者資格取得届」などを提出して行います。法人設立後、原則として速やかに手続きが必要です。登記事項証明書や役員報酬を決めた議事録などを求められることがあります。設立支援を依頼した専門家や社労士に、設立とセットで進めてもらうとスムーズです。
見落としがちなリスク・失敗と制度の限界
ここは正直に書いておきます。一人社長の社会保険には、次のような落とし穴があります。
第一に、加入を先延ばしにすると遡及請求のリスクがあります。「利益が出てから」と後回しにしていると、本来加入すべきだった時点まで遡って保険料を求められることがあります。第二に、役員報酬を高く設定しすぎると保険料も比例して膨らむ点です。手取りを増やそうと報酬を上げた結果、社会保険料と税金で目減りする、という失敗はよくあります。第三に、報酬ゼロで社会保険を回避すると、その間の年金加入期間や保障が積み上がらないという限界もあります。目先の負担を避けた分、将来の受給や万一のときの保障が薄くなるわけです。どれも「知っていれば防げた」類の失敗で、設立初期に方針を決めておくことが何より重要です。
固定費も社会保険と一緒に見直す──クリガレ星ヶ丘という選択肢
社会保険料という固定的な負担が増えるからこそ、事務所家賃などの固定費は身軽にしておきたいところです。名古屋・星ヶ丘のクリガレ星ヶ丘は、旧・星が丘自動車学校をリノベーションしたコワーキングスペースで、一人社長やこれから法人化する方の拠点として使えます。料金は税込で、個人・個人事業主向けのベーシックプランが月3,278円、法人登記までできる法人・団体プランが月7,678円(半年〜)。入会金は個人16,500円・法人38,500円です。まず試したい方はドロップイン330円/30分から利用でき、会議室は会員660円/時間・一般1,500円/時間。イベント等の貸切は3時間33,000円・終日99,000円です。郵便物は専用ロッカーで24時間受け取れます。星ヶ丘駅から徒歩5分の立地です。
クリガレ星ヶ丘が向かないケース
正直にお伝えすると、次のような方にはクリガレが最適とは限りません。
ひとつ目は、とにかく費用を最小にしたい方です。住所貸しだけの格安バーチャルオフィス専業のほうが、月額数百円台から使えて合理的な場合があります。ふたつ目は、名駅(名古屋駅)や中心部の住所が事業上どうしても必要な方です。星ヶ丘という立地が営業上マイナスになるなら、別のエリアを検討すべきです。三つ目は、許認可の要件で専有スペースや独立した区画が必要な事業です。共用スペース中心のコワーキングでは要件を満たせないことがあります。ご自身の事業に合うかどうかを基準に選んでください。
まとめ
一人社長でも、役員報酬を支払っていれば健康保険・厚生年金への加入は原則義務です。2026年度は厚生年金18.3%・協会けんぽ平均約9.9%が目安で、会社と個人の両方を負担する一人社長にとっては小さくないコストになります。加入の先延ばしや報酬の設定ミスは後から響くため、設立初期に方針を固めておくことが大切です。保険料という固定負担が増えるぶん、働く場所などの固定費は柔軟に見直していきましょう。
よくある質問
Q. 従業員がいない一人社長でも社会保険に入る必要がありますか?
A. 役員報酬を受け取っている場合は、従業員がいなくても健康保険・厚生年金に原則加入する必要があります。
Q. 役員報酬をゼロにすれば社会保険に入らなくてよいですか?
A. 給与から天引きする対象がないため加入できませんが、その間は年金の加入期間や保障が積み上がりません。
Q. 一人社長の社会保険料はどのくらいですか?
A. 役員報酬(標準報酬月額)で決まります。月30万円なら会社・個人合計で月8〜9万円程度が目安です。
Q. 個人事業主のときと比べて負担は増えますか?
A. 保険料自体は増える傾向ですが、厚生年金の上乗せや傷病手当金など保障は手厚くなります。
Q. 加入手続きはどこで行いますか?
A. 会社の所在地を管轄する年金事務所で、新規適用届などを提出して行います。
関連記事・次に読む
これから法人化する方は一人社長の会社設立の進め方、報酬と手取りのバランスは法人化と売上ラインの考え方もあわせてご覧ください。働く場所の選択肢は料金プランやバーチャルオフィスのページで確認でき、見学や相談はお問い合わせから受け付けています。
