ペットシッターや犬の散歩代行、出張トリミングなど、お客様のご自宅にうかがう形の仕事で独立するとき、多くの人が最初に詰まるのが「事業所の住所をどうするか」です。第一種動物取扱業の登録には事業所の届出が必要ですが、自宅を登録すればその住所は行政に公表されます。訪問がメインで自宅を仕事場として使っていないのに、防犯上の理由から自宅住所は出したくない——そう考える方は少なくありません。
そこで候補に上がるのがバーチャルオフィスです。ただ、ネット上には「動物取扱業はバーチャルオフィスでは無理」「いや、業種によっては通る」と正反対の情報が混在していて、判断がつきません。実際、古物商許可のようにバーチャルオフィスでは原則通らない許認可も存在します。
結論から書きます。飼養施設を持たない訪問型の「保管」であれば、バーチャルオフィスの住所を事業所として第一種動物取扱業を登録できる場合があります。これは一般論としての推測ではなく、2026年8月に名古屋市の担当窓口へ確認した内容にもとづくものです。この記事では、そのとき確認できた3つのポイントと、逆に「これでは通らない」ケースを整理します。
そもそも第一種動物取扱業とはどんな登録か
第一種動物取扱業は、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)にもとづく登録制度です。営利目的で動物を扱う場合、次の7つの業種区分のいずれかに当てはまれば、事業所ごとに都道府県知事または政令市長の登録を受けなければなりません。
- 販売(ペットショップ、ブリーダーなど)
- 保管(ペットホテル、ペットシッター、散歩代行、預かり型トリミングなど)
- 貸出し(撮影用・繁殖用の貸出しなど)
- 訓練(しつけ教室、出張トレーナーなど)
- 展示(動物園、ふれあいカフェなど)
- 競りあっせん業
- 譲受飼養業(有料老犬・老猫ホームなど)
登録は事業所単位で、有効期間は5年です。登録には常勤の動物取扱責任者を置く必要があり、半年以上の実務経験または1年以上の飼養経験に加えて、所定の資格などによる専門的知識の証明が求められます。手数料は自治体ごとに定められており、たとえば愛知県は1業種につき15,000円(同一施設で2業種目以降は12,000円)です。名古屋市に申請する場合の金額は名古屋市動物愛護センターにご確認ください。
なぜ「バーチャルオフィスでは通らない」と言われるのか
許認可でバーチャルオフィスが問題になる理由は、大きく2つあります。
1つ目は施設要件です。動物を実際に置いて世話をする業種、たとえばペットホテルやブリーダーは、ケージの規模や構造、日照・換気、汚物処理などについて細かい基準を満たした「飼養施設」が必要です。当然ながら、住所だけを借りるバーチャルオフィスにそんな施設はありません。ここは議論の余地なく不可です。
2つ目は使用権原です。申請には「事業所の土地建物を使う権利があること」を証明する書類が要ります。自己所有なら使用権原自認書、他人の建物なら所有者からの使用承諾証明書(名古屋市では様式45)です。バーチャルオフィスの運営会社はテナントとして入居しているだけで建物を所有していないケースが多く、「そもそも証明書を出せる立場なのか」という点が問題になります。
古物商許可でバーチャルオフィスが通らないとされるのは、営業所に「独立して営業を行える実体」や盗品の一時保管ができる場所が求められるためで、これは施設要件の問題です。第一種動物取扱業でも飼養施設が要る業種は同じ理屈で不可になります。逆にいえば、飼養施設が不要な業種であれば、残る論点は使用権原だけになります。
名古屋市に確認した3つのポイント
訪問型の業務がメインで、飼養施設を持たない「保管」について、バーチャルオフィスの住所を事業所にできるかを名古屋市の担当窓口へ確認しました。得られた回答は次の3点です。
① 使用許諾証明書は「事業所」だけに丸をつけて出せる
名古屋市の使用許諾証明書(様式45)には「事業所」「使用施設」という記入欄がありますが、両方をセットで記入する必要はなく、「事業所」のみに丸をつけ、「使用施設」は線を引いて消す形で差し支えないとのことでした。飼養施設を持たない申請では、この書き方で問題ないという確認です。
② 建物を所有していなくても、大家と運営会社の両者の許諾があればよい
バーチャルオフィスの運営会社が建物を所有せずテナント入居している場合について、建物所有者(大家)と運営会社の両方から許諾が取れていれば、代表してどちらか一方が証明書を発行すれば足り、2枚出す必要はないとのことです。ここが「運営会社が所有者じゃないから無理」という誤解の分かれ目になります。
③ 飼養施設のない保管業なら、バーチャルオフィスへの立入検査は行われない
登録後の立入検査についても確認しました。飼養施設を持たない保管業の場合、保健所がバーチャルオフィス側へ立入検査を行うことはないとのことです。バーチャルオフィスのサービスは郵便物の受け取りと住所利用のみで、動物がその場所にいるわけではないためです。運営会社側から見ても、これは受け入れやすい条件になります。
※ これは2026年8月時点で名古屋市に確認した内容であり、飼養施設を持たない「保管」を前提とした回答です。自治体・業種・個別の事情によって判断は変わります。実際の申請前には必ず管轄の窓口にご自身でご確認ください。一般的な流れの解説であり、個別の判断は専門家にご相談ください。
使用許諾証明書で見落としやすい「使用期間」の書き方
もうひとつ、実務的に効くポイントが使用許諾証明書の使用期間欄です。契約期間をそのまま書くと、更新のたびに証明書を出し直すことになりかねません。
開始日を記入したうえで「3年ごと自動更新」と追記する形が推奨とのことです。こうしておけば、契約が自動更新される限り、毎回の提出が不要になります。バーチャルオフィス側に証明書を依頼するときは、この書き方でお願いできるか併せて相談しておくとスムーズです。
見落とすと後悔する:事業所の住所は一般に公表される
ここは必ず押さえてください。第一種動物取扱業の登録事業者の情報は、事業所の住所を含めて一般に公開されます。自宅住所を隠したい人にとってはバーチャルオフィスを使う動機そのものですが、裏を返せば、借りた住所が「あなたの事業所」として公表され続けるということでもあります。
そのため、バーチャルオフィス側にも「この住所が動物取扱業の事業所として公表されることを許可するか」という判断が発生します。運営会社によっては、住所公表を伴う許認可利用そのものを断っている場合があります。申し込み前に、許認可の種類を伝えたうえで可否を確認しておくのが確実です。

バーチャルオフィスでは通らない・向かないケース
使えるケースだけ書いても判断材料になりません。次のいずれかに当てはまる方は、バーチャルオフィスを選ぶべきではありません。
- 飼養施設が必要な業種を営む場合。ペットホテル、預かり型のトリミング、ブリーダー、展示、譲受飼養など、動物を実際に置く事業は基準を満たした施設が要ります。バーチャルオフィスでは登録できません。
- 事業所の住所が公表されることに抵抗がある場合。自宅を隠せても、借りた住所は公表されます。「どこにも住所を出したくない」という要望自体は、この登録制度と両立しません。
- 管轄自治体が事業所への実体を求めている場合。今回の確認はあくまで名古屋市の、飼養施設なしの保管業についての回答にすぎません。他の自治体では、事業所に机や電話などの実体を求める運用がありえます。まず窓口に相談してください。
また、住所を借りるだけで月額の固定費は発生します。訪問業務の売上が立つ前の段階では、その分の負担が重く感じられることもあります。開業直後は自宅で登録し、事業が軌道に乗ってから住所を移す、という順番も現実的な選択肢です(住所変更には変更届が必要です)。
自宅・賃貸事務所・バーチャルオフィスの比較
| 項目 | 自宅 | 賃貸事務所 | バーチャルオフィス |
|---|---|---|---|
| 月額の目安 | 追加費用なし | 数万円〜十数万円 | 3,278円〜7,678円(当施設の場合・税込) |
| 住所の公表 | 自宅住所が公表される | 事務所住所が公表される | 借りた住所が公表される |
| 飼養施設が要る業種 | 条件を満たせば可 | 条件を満たせば可 | 不可 |
| 使用権原の証明 | 持ち家は自認書/賃貸は大家の承諾 | 大家の使用承諾証明書 | 運営会社(+大家)の許諾が必要 |
| 賃貸契約上の制約 | 事業利用不可の契約もある | 事業利用前提で問題なし | 契約上の制約を受けない |
※料金は2026年8月時点の税込表示です。
クリエイティブガレージ星が丘のバーチャルオフィス
私たちは名古屋市千種区・地下鉄東山線 星ヶ丘駅から徒歩5分の場所で、コワーキングスペースとバーチャルオフィスを運営しています。施設は星が丘自動車学校の建物の一部をリノベーションしたものです(自動車学校は現在も営業しています)。スタッフのいる実在の拠点なので、いつでも見学していただけます。
住所利用と郵便受取に絞った2プラン
ベーシック(個人・個人事業主):月額3,278円・入会金16,500円。Webや名刺への住所表記、個人事業主の事業所住所としての利用、郵便物の受取と郵便ロッカー(小)が含まれます。
法人・団体プラン:月額7,678円・入会金38,500円・半年契約から。住所表記に加えて法人登記が可能で、郵便ロッカーのサイズ選択、郵便転送オプション、会議室利用の割引が付きます。
郵便はスタッフが受け取り、写真付きでメールまたはSlackに到着通知。施錠ロッカー(24時間監視カメラ・録画付き)に保管し、24時間ご自身で受け取れます。遠方の方向けに転送はスポット605円/回+送料、定額1,210円/月+送料。申し込みはオンラインで完結し、本人確認・審査ののち最短4営業日(通常1週間程度)でご利用開始いただけます。
月3,278円から、星が丘の住所を事業所住所に。
なお、バーチャルオフィスは住所利用と郵便受取のサービスであり、スペースの利用は含まれません。作業場所も必要な方は、月額会員(平日24時間プラン16,500円/月、24時間プラン23,650円/月・入会金16,500円)や、ドロップイン330円/30分をご検討ください。
許認可を伴うご利用については、申し込み前に業種と登録の種類をお知らせいただければ、使用許諾証明書の発行可否を含めて個別にご相談させていただきます。すべてのケースでお受けできるとお約束はできませんが、行政窓口への確認からご一緒するかたちでお手伝いできます。
申請までの現実的な流れ
- 業種区分を確定する。自分の事業が「保管」なのか「訓練」なのか、飼養施設が要るのかを整理します。ここが曖昧なままだと以降が全部やり直しになります。
- 管轄の窓口に相談する。名古屋市内なら名古屋市動物愛護センター(千種区平和公園二丁目106番地/052-762-0380)です。バーチャルオフィスを事業所にしたい旨を最初に伝えてください。
- バーチャルオフィス側に可否を確認する。住所が公表されること、使用許諾証明書の発行が必要なことを伝えます。
- 動物取扱責任者の要件を満たす。実務経験または飼養経験と、資格などによる知識の証明を用意します。ここに時間がかかるケースが多いです。
- 申請書類を揃えて提出する。登録申請書、欠格事由に該当しないことの書類、使用権原を証する書類、責任者の要件を証する書類などを提出します。
関連する社内リンク
料金とプランの詳細はご利用プラン、お申し込みの流れは名古屋・星が丘のバーチャルオフィスのページをご覧ください。許認可を伴うご利用のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
まとめ
第一種動物取扱業とバーチャルオフィスの関係は、「使える/使えない」の二択ではなく、飼養施設が要るかどうかで分かれます。ペットシッターや散歩代行のように動物を預かる場所を持たない訪問型の「保管」であれば、バーチャルオフィスの住所を事業所として登録できる余地があります。名古屋市への確認では、使用許諾証明書は「事業所」のみに丸をつける形でよく、建物所有者と運営会社の双方の許諾があればどちらか一方の発行で足り、飼養施設のない保管業への立入検査は行われない、との回答でした。
一方で、事業所住所が一般に公表される点は避けて通れません。自宅を守るためにバーチャルオフィスを使う設計は成り立ちますが、「どこにも住所を出さない」ことはできません。ここを理解したうえで、管轄窓口とバーチャルオフィス運営会社の両方に事前確認する——これが遠回りに見えて一番速い進め方です。
クリエイティブガレージ星が丘では、月3,278円から星が丘の住所をご利用いただけます。許認可を伴うご利用のご相談も含めて、お問い合わせからご連絡ください。実際の拠点を見てから決めたい方は、名古屋・星が丘のバーチャルオフィスのページから無料見学をお申し込みいただけます。
